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今井ミカ監督長編映画『虹色の朝が来るまで』クラウドファンディング実施中!

特定非営利活動法人シュアールの手話TVディレクターである今井ミカが監督を務める長編映画『虹色の朝が来るまで』が、大高健志さんが率いるモーションギャラリーにてクラウドファンディングをしています。

今井さんとは、お互いに大学2年生だった時に2週間の筑波技術大学北欧研修へ一緒に参加した事がきっかけで、研修後にグッドデザイン賞を取得した手話PodChannelを一緒に立ち上げました。彼女の香港留学を機にシュアールを一時的に離れますが、帰国後にシュアールに再び合流してくれて、一緒に手話TVの立ち上げをし、現在までディレクターとして活躍してくれています。


今回の長編映画では、ろう者であり、LGBTQ当事者である今井さん本人の原体験を基に、未だに聴者と比べて閉ざされたマイノリティな聾者の世界で、更にマイノリティであるLGBTQの苦悩を描きます。今回は、多くの人に聾者やLGBTQの事を知ってもらい、考えてもらいという想いから、映画に音楽を入れたり、日本語字幕だけではなく英語字幕も入れるそうです。
既に8月16日からクランクインをしているが、まだまだ製作費が足りていない状況だそうです。一人でも多くの人に、今井さんの素晴らしい映画と想いが届くように、私も微力ながら支援をさせて頂きました。今から映画を観るのが楽しみで仕方ありません。是非、皆さんも今井さんのクラウドファンディングサイトをチェックして下さい!

*本映画は今井さんの個人の活動で、シュアールグループとは関わりはありません。私も個人として応援をしています。

【映画レビュー】『LISTEN リッスン』(2016)

ろう者が表現した「音楽」を映画にしたアート・ドキュメンタリー『LISTEN リッスン』。会場では来場者に耳栓が配られるほど、徹底した無音状態が作り出される。完全無音の音楽から、聴者は何を感じるのか。ろう者にはどのように受け入れられるのか。

この映画の受け取り方は、手話のわかる聴者、手話のわからない聴者、ろう者によって全く違うものになるだろう。もちろん、難聴者や日本手話のわからない外国人のろう者、などによっても感じ方は変わるだろうが、大きく分類すると、この3つであろう。

手話のわかる聴者として私が感じた事は「なんてうるさい映画なんだ」というものだった。もちろん、音は耳から全く入ってこない。目の前にある無音の映像のみを見ているはずなのに、脳内では自然と音を再生してしまう。それも、58分もの間、ひっきりなしに。
手話がわかるから自然と手話に音を付け足してしまうのか、そもそも身体の構造上、耳が聞こえる人は無音の音楽を受け入れられずに、脳内で勝手に音を作り出してしまうのか………。この「無音のうるさい映画」は、これまでのどの映画とも、全く違った経験を与えてくれた。
手話に関わっている人も、手話が少しもわからない人も関係なく、全ての人に「体験」してもらい映画だ。

明日、5月22日(日)に共同監督の牧原依里と「日本手話を使う聴者から観た『LISTEN リッスン』の世界」というテーマで渋谷のUPLINKにてトークショーを行います。是非とも多くの方に来て頂ければと思います。
トークショー詳細


共同監督・撮影・制作:牧原依里・雫境(DAKEI)

出演:米内山明宏、横尾友美、佐沢静枝、野崎誠、今井彰人、岡本彩、矢代卓樹、雫境、佐野和海、佐野美保、本間智恵美、小泉文子、山本のぞみ、池田華凜、池田大輔
配給:アップリンク 宣伝:聾の鳥プロダクション 協賛:モルデックスジャパン
2016年 / 日本 / 58分 / DCP / サイレント

【映画レビュー】『ギャラクシー街道』(2015)

「多様性」
この映画を一言でいうと、この単語に尽きる。

西暦2265年、太陽系第5惑星(木星)と第6惑星(土星)の間にあるスペースコロニー「うず潮」と地球を結ぶスペース幹線道路「ギャラクシー街道」。地球とのシャトル停留所があるため、利用者向けに多数のレストランがあり、そのギャラクシー街道の中央にあるサンドサンドバーガー・コスモ店が物語の舞台である。
この映画には、多数の異星人が登場する。月1で脱皮をするアシヌス人、見た目は人間の男性のようなのに両性具有で卵を産むアンゲルス人、地球の平和を守るために派遣されたヒーロー「キャプテンソックス」などなど。彼らと地球人の間で起こる常識のずれが、様々なストーリーを引き起こす。

中でも面白かったのは、地球人が異星人とのデリバリーヘルス(風俗)を利用するシーン。初めて異星人と性交渉をする地球人が、ボーイに病気がないか、と繰り返し安全性について確認をする。しかし、実際に来た異星人の風俗嬢は「あなた、地球人でしょ?どんな病気を持っているか、わかったものじゃない」とまったく同じことを言う。自分本位の考え方しか持ち合わせていなかった地球人を滑稽に映し出したシーンだ。
また、異星人との性交渉シーンも面白い。内容は人間同士のものとは全く違い、人差し指の先端同士を触れ合わせるというもの(E.T.のオマージュであろう)。不平を言う地球人に「これが私たちのやり方、他に何をお望み?」と異星人。これも常識の違いを如実に表したシーンだ。

この映画では、このような常識のズレがマシンガンのように問題を引き起こし、ストーリーが展開される。私は、単一文化で暮らす日本人が外国人や障がい者、性的マイノリティーなど自分と違う人々との関わりに慣れていない様が、異星人と地球人という形に置き換えられると感じた。様々な常識、価値観、生き方、愛の形があり、どれが正解という事はなく、それぞれの違いを受け入れ、特性を認め合う事の大切さを、ポップなコメディーとして表している素晴らしい作品だと考える。

ただし、一つ同意できない部分がある。「宇宙でダメだった人が、どこ行ったって上手くいくわけない」というセリフである。
このセリフはストーリーの流れから考えて、宇宙をメインストリームではない場所、左遷された場所と捉え、地球で成功できない人が致し方なく流れ着く場所というニュアンスを含んでいる。
ただし、私は、これほどの多様性のある宇宙での成功は、地球人の単一文化内での成功よりも価値の高いものであり、本当の成功であると考える。これからの日本でもオリンピック・パラリンピックという直近のイベントだけでなく、ITや交通手段などの発展による世界のグローバル化の中で、今まで以上に多様性が重要になってくる。多様性の中での成功こそが真の継続性を維持できる成功だと考えると、宇宙での活動を地球での成功よりも下に見たようなこのセリフは間違っていると思う。

しかし、全体を通した感想としては、大変によくできた作品だと考える。他のレビューを読む限り、あまり評価をされておらず、興業的にも芳しくないようではあるが、私としては多様性の観点から是非とも多くの方に見て頂きたい作品だ。

最後に、特に私にとって衝撃的だった映画内のセリフを記載してレビューを終える。
「宇宙では片思いで、子を宿すのはざらだからね」

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予告編
公式ホームページ

監督:三谷幸喜
出演:香取慎吾、綾瀬はるか、小栗旬、優香
2015年/日本/カラー/109分
製作:フジテレビ、東宝
配給:東宝

【映画レビュー】『Maiko ふたたびの白鳥』(2015)

2016年2月20日ロードーショー予定の『Maiko ふたたびの白鳥(Maiko: Dancing Child)』の試写会に招待して頂きました。
世界のトップで活躍する日本人プリマの西野麻衣子氏にフォーカスを当てたドキュメンタリー。日本人が主人公の海外ドキュメンタリー映画は比較的に珍しいと思います。

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『女性の社会進出が進む中で、どんな女性も抱える可能性のある悩み、「仕事」か「母」か……。ここに世界最高のバレリーナにまで登り詰めた日本人女性の出した一つの答えがある。』

15歳で世界に飛び出した西野麻衣子。世界中のバレリーナが集まるノルウェー国立バレエ団に19歳で入団。25歳の時に東洋人初のプリンシパルに抜擢される。順調にバレリーナとしてのキャリアを積んできた彼女も一人の女性として、母親になりたいと思い始める。しかし、競争の激しい世界で、若い世代が着実に伸びている今、出産による長期離脱は出来ないと思った矢先に、突然の妊娠が発覚する。仕事か、子育てか。全ての女性が抱えるであろう問題に、世界のトップで活躍する西野も直面する。
一見すると、バレエ色の強い映画と思われがちだが、バレエに全く詳しくない人でも十分に楽しめる内容である。更に、西野の等身大の悩みは、彼女の肩書に関係なく、全ての女性が共感できると思う。そして、彼女を支える家族の生き方には、男性も考えさせられるものがある。

女性の社会進出を、西野麻衣子という世界トップのバレリーナの視点を借りる事で、少し違った角度から映し出した映画ではないだろうか。70分という短い映画なので、忙しいキャリアウーマンをはじめ、多くの人に観て頂きたい作品である。

監督:オセ・スペンハイム・ドリブネス
出演:西野麻衣子、西野衣津栄
2015年/ノルウェー/カラー/70分/DCP
配給:ハビネット、ミモザフィルムズ

【映画レビュー】『サウルの息子』(2015)

先日、2016年1月23日公開予定の『サウルの息子(SON OF SAUL)』の試写会に招待して頂きました。
本作品が長編デビュー作のネメシュ・ラースロー監督。無名の新人監督にも関わらず、第68回カンヌ国際映画祭でグランプリを受賞した衝撃作!107分という比較的に短めの映画ではありますが、全身に衝撃が走る重たい映画でした。

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『登場人物一人一人の押し殺された感情が、映し出されている内容を全て事実だとして受け入れざる負えない重い空気感を作り出している。』

同じユダヤ人を葬るために囚人でありながら、殺されずに働かされている特殊部隊「ゾンダーコマンド(ドイツ語: Sonderkommando)」に焦点を当てた本作品。主人公「サウル」は、自分が担当してガス室に閉じ込めた同胞の中に、自らの息子を発見する。死体となってしまった息子を、せめてユダヤ教の教義通りに埋葬しよう(*)と、周囲と衝突しながら奮闘する。そんな中、仲間たちの間では密かに脱走計画が進行していた……。

特筆するべきは、その撮影手法である。基本的に主人公サウルを常に画面に映し出し続ける撮影手法が使われている。更に、被写界深度が極めて浅いので、彼の背景で起きている出来事の多くがぼやけている。しかし、それによってホロコーストの残虐性を表現しつつ、残虐的なシーンにばかり目が行くことを防いでる。
また、主人公の行動シーン以外がないため、収容所の全体像を把握するのは困難である。人々をガス室に案内するシーン、死体を運び出すシーン、燃えて灰となった死体を川に流すシーンと断片的に死体処理の工程が映し出される。観客も少しずつ情報を得ながら、自分で想像して欠けているシーンを埋めていく必要がある。これは、この時代の混乱の世界感に観客を取り入れるのに素晴らしい効果があった。

ホロコーストをテーマにした映画は数多くあるが、これまでとは全く違った切り口で作られた作品ではないだろうか。

(*ユダヤ教では火葬は禁止されている)

監督:ネメシュ・ラースロー
出演:ルーリグ・ゲーザ、モルナール・レヴェンテ、ユルス・レチン
2015年/ハンガリー/カラー/107分/スタンダード
配給:ファインフィルムズ